新作を期待したい~『銀河英雄伝説 アニメ版』
ケーブルテレビ等でつまみ食い的に観てはいたが、この春からCS「キッズステーション」で放送が始まったのを機に「銀河英雄伝説」のオリジナルビデオ版を1話から通して観てみることにした。
このシリーズは、コケの一念というか、あの長大な原作をとにかく頭からお尻まで完全にアニメ化したというもの。というか、「全部やった」というのがほとんど唯一の価値というような作品である。
アニメとしての評判は芳しくなく、この間断続的に観た範囲では、評価できるような要素は何一つなかった。
ただ、最初のほうは、「ミンキーモモ」や「ゴーショーグン」で有名なシナリオライター・首藤剛志さんが書いており、なんとなくそれだけは観る価値があるのではないか、と思っていたのである。
で、ようやく1話から順に観る機会を得たわけだ。まだ、3話までだが、予想通り、シナリオはさすがに及第点。ただし、アニメーション的には見るものなし、というのが現状の評価である。
たとえば、1話については、原作ではヤンとラインハルトは事前には互いの存在を知らないはずなのだが、そこを微妙にいじっている。「このままなら、大勝利だ。しかし、敵に『あの男』がいたらわからない」とか、「敵の大将がヤッコさんだとすると、簡単にはいかないぞ」みたいな、互いを意識しているセリフを両方に言わせることで、二人のライバル関係を最初からフィーチャーするようにしている。
また、3話での慰霊祭のシーンでは、原作ではヤンは出席した上で起立しないで軍部の不興を買う、という構造だったが、アニメでは、そもそも仮病を使って欠席してテレビで見ているという形にしている。そのことで、ジェシカがトリューニヒトに抗議する光景を見て、「ジェシカが危ない」と、クルマを駆って救援に向かう、というシーンを作っている。
そもそも、2巻目からの登場だったヤンの後輩アッテンボローを冒頭から出し、ヤンとの会話で心情や状況の説明をさせる、など、人の出し入れにも非常に工夫をしている。
動きが少なくたんたんとした原作を何とかドラマとして見やすくしよう、という工夫が随所に感じられ、「傑作」のアニメ化(のシナリオ)としては、よくがんばっていると思えた。
問題は、これだけ工夫をしていた首藤さんが何があったのか途中から降板させられてしまった点。ある時点からがくっとシナリオのレベルが下がり、ほとんど原作を引き写しただけのものになってしまっている(らしい)。
アニメーション的には本当に見るべきものがない。キャラクターは魅力がないし、背景は手抜き、そもそも動いていない紙芝居的アニメーション。予算がないんだなあ、というのが露骨にわかる感じ。
それはともかく、ひとつ痛感したのが艦隊戦の情けなさである。そもそも原作からして、3次元の宇宙空間をあたかも地上の戦車戦のような見立てで描くことで何とかごまかしているのに、絵になってしまうとそもそもの無理が露呈する感じしかない。
ただ、じゃあどうすればよいのかというイメージは思いつけない。考えてみると、アニメでは実はちゃんとした宇宙での艦隊戦は描かれたことがないのではないか、ということも思った。単艦の戦いならごまかせるのだろうが(『ヤマト』とか)、艦隊同士だとかなり難しいハードルがある。演出をかなり工夫しないと、ひどく退屈なものになりそうである(というかこのアニメ版はまさにそうなっている)。
とにかく、今や歴史に残る日本SFの至宝ともいえる原作である。このアニメ版が出来てからずいぶん時間がたったことだし、ぜひ今の技術で再アニメ化を期待したいところだ。その場合は、「原作どおりにやるのが誠意ではない」ということを踏まえて、大胆かつ細心にとりくんでほしいものだと思う。
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