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2008年12月28日 (日)

再録・秋田書店は版元失格!!

「サイボーグ009」の文庫版はマンガ文化への冒涜だ

1998年6月

「サイボーグ009」は言うまでもなく、SFマンガの大傑作である。というか、日本のヒーローものの定型を確立した歴史的作品と言っていい。現在、 秋田書店から当時から続く単行本(サンデーコミックス版)と文庫版が出版されている。問題なのは文庫版である。およそ版元としての最低限の常識も持ち合わ せない最低の出来なのである。なぜ世間で弾劾されないのか理解に苦しむ。

むちゃくちゃな収録順

 まず仰天するのが第1巻。おなじみの「世界各地からブラックゴーストが身よりのない人々を誘拐してくる」というオープニングではなく、「いつもの メンバーが世界各地からまた集まってくる」という不思議な展開からスタートする。ようするに、これはオリジナル(というのもヘンだが)の「009」ではな く、後年2度目のテレビシリーズ化か何かに合わせて書かれた何の価値もないアウトサイドストーリーなのだ。過去を知らない新しい読者が「これが009の始 まりだ」と誤解したらどうするのだろうか。
 で、4巻目あたりから「誕生編」という不思議な名前でオリジナルが始まるのだが、いい加減クズのような話を読まされた後なので、感動が7割方薄れてしま う。で、しばらくまともな順番が続いたと思ったら、その後はまたまた、意味不明のアウトサイドストーリーがめちゃめちゃな順番でまた続くのである。(「こ の間の事件には呼んでもらえなかったなあ」とかいうセリフの出たエピソードの後に、その「この間の事件」のエピソードが収録されていたりするのだ)

初出の記述が一切ない

 もしかしたら、何らかの都合で順番をめちゃくちゃにせざるを得ない事情があったのだろうか。だとしても許せないのが、初出の記述が一切ない点だ。 読んだ記憶のない妙なストーリーが延々続くので、これは「少女コミック版では」とか「マンガ少年か」とかいろいろ思うのだが、確認のしようがない。「クビ クロ」とか時間漂流の話など、オリジナルで読んだ記憶がある話が後のほうに収録されていたりして、混乱することこの上ない。
 秋田書店は、単行本を出すときには初出を明記するという、基本中の基本すら知らないのだろうか。だとしたら、出版社を名乗るのを今すぐやめるべきだ。

なぜ「天使編」が収録されないのか

 極めつけが、「天使編」の不収録である。子供のころ、わくわくしながら読み進み、いよいよというところで「もう少し時間をください」という作者か らのメッセージを見せられたときの落胆と不思議な感慨。当然もう一度味わえるものと信じていたのに、いくら先を買っても出てこない。
 未完ということで収録を見送ったのだろうか。だとしたらとんでもない不見識である。「009」は、未完の「天使編」を含めてある意味で「完結」している 作品なのである。作者の意向だったのかもしれないが、そのまま受け入れたのなら出版社として矜持がなさすぎるし、どうしても外さざるを得なかったのなら、 最低事情説明があってしかるべきであろう。にしても、今も版を重ねているサンデーコミックス版ではきちんと収録されているのだから解せない話だ。

 ここまで著名なマンガの場合、もはや作者や版元が勝手に弄ぶことは許されない。読者も含めて一種の共有財産であるととらえるべきである。どういう 裏の事情があったにせよ、何のことわりもなくいい加減きわまりない形態で出版するというのはマンガ文化への冒涜であると言っていい。

 ここではっきりと言っておきたいが、いかに「石ノ森先生」が描いたものであっても、傑作と駄作ははっきりとある。「009」が「009」であるの は「天使編」までであり、その後描かれた様々なアウトサイドストーリーは付け足しでしかない。残念ながら駄作の部類である。作家には描くべき時期と描くべ き素材があるのだから、これは別に不名誉でも何でもない。文庫版「009」はなまじ後年のエピソードを大事に扱おうとして、逆に作者の名誉を汚しているの である。
 秋田書店に良心のカケラが残っているのなら、「天使編」までのエピソードをキチンと発表順に収録した「定本009文庫」を一刻も早く出版してほしいものだ。


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