プリキュア劇場版
「ハートキャッチ・プリキュア」の映画は、非常によかった。どのくらいよかったと言うと、今まで僕の中の「子供向けテレビアニメの劇場版」のベストは
「アンパンマン 命の星のドーリィ」だったが(これも必見です)、それを超えてベスト1に押したくなるくらいのできだった。前日に、予習として「プリキュ
ア5」の映画1作目を観ておいたのであるが、ちょっと「格が違う」感じだった。
全員がパリへ行って、ファッションショーに出る、というノー天気な話かと思いきや、敵側にはいつもの3バカトリオは出てこず、一見美少年・実は
狼男というオリビエ、その親代わりにして実は世界の破壊たくらむサラマンダー男爵とのハードかつ奥深い話が、テンポよく描かれる。
要するに、テーマは「異形なるものの孤独」であり、まあよくある話ではあるが、それをプリキュアの枠の中で描き、しかも悲劇ではなく、ちゃんと前向きな話として子供に見せられるようにまとめているのがよかったのである。
・よかったところ
まず、ちゃんと、つぼみ(キュアブロッサム)が主人公になっていた点。続々と新しいプリキュアが登場し、主人公としての存在が薄くなっている、
というテレビシリーズの流れを逆手にとって、「力は弱いかもしれないけども、人を大事に思う気持ちは一番。だからこそ、ほかのプリキュアが信頼しているの
だ」というテーマを貫いていたのがよかった。
(後半に敵に回った)オリビエが、親友のエリカ(キュアマリン)と戦っている中で、両方とも傷つけたくない、とエリカのビーム(?)を体で受け止めボロボロに、そのことでオリビエの中の人間の心が戻ってくる、というあたり、お約束とは言っても、実に泣かせる展開。
また、つぼみを含めた各メンバーは、もともとはそれぞれの心に悩みを抱えていたが、それを仲間のおかげで乗り越えることができた。それを踏まえ て、各メンバーが、オリビエに自分の話をすることで、オリビエの心が少しずつ開いていくという展開が前半の軸になるのだが、これは同時に、各プリキュアの 紹介や作品世界の理解につながるわけで、限られた尺を効率的につかっていると、たいへん感心した。
・さらによかったところ
テレビシリーズで今のところあまり役に立っていない設定、「プリキュアと砂漠の使途はものすごく昔から戦っていた」「プリキュアと砂漠の使途は
対となる存在」といった本来、魅力的な部分を、今回は、「初代プリキュア・キュアアンジュ(!?)との戦いに敗れ、砂漠の王からも忌避され、400年幽閉
された第一の使途・サラマンダー男爵」という設定に巧妙に生かしていた。敵からも味方からも疎外されたサラマンダーは、世界を破滅させることしか興味がな
い。もはや砂漠の王すら敵なのだ。とか、なんかいい感じである。
・ちょっと苦しいところ
お約束でやらなければいけないことが多く、うまく処理はしているとは思うが、たとえば、冒頭のオリビエがデザトリアンになって、それを3人のプリキュアが倒す、というシークエンスは、意味不明だった。
また、オリビエがファッションショーに出ることになる、という話も途中でどっか行ってしまったし、最大の問題は、みんなに懐中電灯を振って、と
いうお決まり展開があるのだが、ちゃんと作中で表現していないため(まあ、それをちゃんとやると、作品的には台無しだが)、子供たちが懐中電灯を振るタイ
ミングを逸してしまうのだ。これは、東映的にはまずかったのではないだろうか。
・「女細田」の面目躍如だったところ
中盤、サラマンダー男爵のところに乗り込んだキュアムーンライトがサラマンダー男爵から、世界の真実を告げられるシーン。これもお約束だが、
パーフォレーションが痛んだフィルム風の「記録映画」が流れるなか、延々とサラマンダーの長台詞が続く。ちょっとやりすぎだが、非常に凝った画面であっ
た。
ほかにも、テロップ文字をすべて画面の中に組み込んだオープニングとか、随所に「こだわり」を感じさせる表現が多かった。サラマンダーとオリビ
エが世界中を旅をしている点描なんかもいい。最初に、まず孤独の表現として淡々と描き、終盤でもう一度同じ絵を繰り返して、別の意味を与える、という演出
にも感心。
・声優に関して
全編声優の映画は本当にいいなあ、とまたまた思ってしまった。特にオリビエ役の大谷さんが実に感じが出ていた。
てな感じで、キリがないのでやめるが、「カラフル」のような例外を別とすれば、期待の割りに低調だった今年のアニメ映画の中では、一番楽しめた作品だ。
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